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November 15, 2007

2007年11月15日(木)

 若ければ、ビニール傘の粉雪をはらって入る結社未来事務所/加藤治郎

第五歌集『ニュー・エクリプス』(二〇〇三年)の一首。初句にいきなりあらわれる「若ければ、」の五音と読点で、この歌のモチーフは出し尽くされていると思う。若いときには行動の選択が高い恣意性を帯びていた、必然的な時間の流れなどはどこにもなかった、けれども現在は、という、およそ例外のない感慨のようなものとして、多くに共有されたフレーズだが、これを一首として成立させているのは、以後の結句にまで連なる非詩的な現実描写である。歌人の多くはビジネス以外の「余暇」を短歌の時間にあてている。若ければ、歌人でなければ、ビニール傘の粉雪をはらって入るのは、おのずと違う場所だったろう。「未来」という結社名も、一首に不思議な力を与えているように思う。

七五三。あ、加藤治郎さんの誕生日、と思って、なんとなく書棚から加藤さんの歌集を抜き出してひらくと、初見では強く印象に残らなかった前述の一首が目にとびこんで来た。歌集はやはり繰り返し読まないとだめだなと思う。夜、家人と名古屋駅のミッドランドスクエアに行く。テナントのほとんどが横文字のブランドで、これ何語だろうとか思ってロゴを見ていると、外国語が苦手なはずの家人が横ですらすらと読みあげてゆくのだった。そこはかとない劣等感とあきらかな危険を感じて歩調を早めた。

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