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February 04, 2009

2009年2月4日(水)

立春。寒が明けた。もっとも、名古屋では、一週間ばかり、この時期らしからぬ温和な日が続いている。そのせいもあるのか、何日か前、近隣を歩いていると、沈丁花の匂いがした。え? と思って、あたりをきょろきょろしながら匂いを嗅ぎなおす。時期が少し早いような気がするし、どこに花があるかわからなかったが、まちがいなく沈丁花だった。しばらくその場に佇んで、春の匂いを楽しんでいた。

 前ゆく影の足よりのびてにんげん立てり/高橋みずほ

第四歌集『しろうるり』(二〇〇八年)に収録された一首。極端な字足らずで、七七七になっている。音を補って五七五七七にしようとすれば、たとえば「立春の前ゆく影の揺れながら足よりのびてにんげん立てり」などとして、正調にすることも容易なので、やむを得ず字足らずの調べになったのではなく、意図的に初句と三句を欠落させている、と考えるべきなのだろう。この一首が、恣意的なリズムだと批判したくなる手前のところで、きちんと成り立っているのは、補完によって状況の詳細が見えるよりも、見えない方がかえって、物としての「影」の質感がしっかりしたものになるからだと思われる。高橋みずほさんには、極端な字足らずの歌が多い。読むたびに躓く感覚をおぼえて、他の破調の文体のように慣れることができない。字足らずが生じる理由が一首毎に異なって見えるためだ。引用歌のように納得できる字足らずもあれば、自分にとって納得できない字足らずもあるのだが、いずれも、音数としての定型以外の何が短歌を規定してゆくのか、それを考えるきっかけとして、十分に楽しませてくれる作品になっている。

きょうの一首。

 すこしづつ硬さのちがふ闇がならぶ寒明の夜のコインパークに/荻原裕幸

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