2009年6月22日(月)
ダイドーの飲料の自動販売機には、お金を入れると、こんにちは、とか、買ったあとに、釣銭をお忘れなく、とか、午後からもがんばって下さい、とか、状況に応じたメッセージが流れるものがある。喋る自販機は巷に数々あって、事務的なことしか言わないため、うるさく感じるものも多いのだが、ダイドーの自販機は、開発した人のこだわりに同調できるからか、不思議に好印象が残る。こういう機械がもっと増えたら楽しいのに。
★
やんだ雨にも気がつかず差し続けている君の傘が空をさえぎる/藤森あゆ美
第一歌集『美しい水たち〜クラゲよ〜』(二〇〇一年)に収録された一首。二人で一つの傘のなかにいるとき、雨がやんでも気づかないことにしようと思うのは、恋愛の心理の基本のはずだが、ここでは「君」の気がつかなさに対する不満が噴き出しているようだ。いつまでもさしている「君の傘」から来る、過保護な感じ、相手に深く干渉する感じ、相手を束縛する感じ、型通りの行為という感じなどが一体化して、どこか疎ましく思われるのだろう。しかし、このような内的な独白は、それを具体的な声にはしないことを意味してもいる。はっきり伝えて関係を壊したくはないのだ。雨のときには傘を、晴れたときには青天を二人で、と願いながら、そのような境地にはたどりつけないのであろうという、もはや傘が云々の問題ではなくなっている問題に対するあきらめに似た不満が、傘の内部でしずかにくすぶっている。
★
きょうの一首。
梅雨のつづく午後をあなたの傘といふ密室にゐて青天を待つ/荻原裕幸

Comments