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January 07, 2011

十三月から見る十二月

早朝、名古屋としてはただならぬ寒さで、書斎のオイルストーブに毛布をかけて、そのなかにからだを半分入れて机に向かっていた。新年が明けてはや七日となるが、年の瀬から気忙しい日々が続いて、正月や一月ではなくて、どこかまだ十三月という感じだ。ただ、ふだんよりもカロリーの高い食事が続いたので、体重やら体脂肪率やらが悩ましい数字を見せている。皮肉にもこれは正月らしい気がする。記録的なことはあらためてまとめるつもりだが、四日は東西句会の新年句会だった。きょう七日からは朝日カルチャーセンターの短歌講座がはじまった。

すでに去年のことになってしまったが、週刊読書人の十二月十七日号、特集「36人へのアンケート二〇一〇年の収穫」に出稿した。その一年の収穫だったと感じた三冊をとりあげて四百字で紹介する恒例の企画である。今回は短歌から一冊、川柳から一冊、現代詩から一冊を選んだ。メディアファクトリーの刊行する「幽」という怪談の専門誌(!)に、佐藤弓生さんが「短歌百物語」なるコラムを執筆している。短歌一首に、怪談風味の鑑賞文を添えるユニークなものだが、十二月中旬に刊行された14号で、第一歌集『青年霊歌』(一九八八年)の一首「恋人と怪獣映画見て冬の街へここでは何も起きない」を鑑賞してもらった。佐藤さん、ありがとうございました。他作の鑑賞とともに楽しく読みました。NHK短歌の十二月十二日放送分で、加藤治郎さんに、第一歌集『青年霊歌』の一首「街といふ虚しき楽器踏み鳴らすハンバーガーをほほばりながら」を紹介してもらった。これはオンエアを見逃したので、録画をあらためて見る予定。加藤さん、ありがとうございました。

十二月九日に東桜歌会の例会があった。午後、葉書とファックスとメールで届いた詠草をとりまとめてプリントを作成。夕刻、栄の愛知芸術文化センターへ。参加者は九人。題詠「野」と自由詠と各一首を提出。二〇一〇年は大阪市の区の名前から一字を貰って毎回の題を決めていた。二〇一一年の題はどうしようかという話になって、杉森多佳子さんの提案で、将棋の駒の名前から一字を貰って決めることになった。歌会はいつもの通り、無記名で互いに選をして、読解を中心に合評を進めた。私の進行もいつも通りで、参加者の短歌観をあれこれと擽ったり、コメントのなかで自信なさそうに小声になるような部分を弄ったりしながら、可能なかぎり詳しく細かく作品を読んでもらう方向へと場を動かす。生真面目に読解を進めてくれるメンバーばかりなので、進行はずいぶん楽をさせてもらっている。年内最後の歌会も無事に終了できたことに遅ればせながら感謝したい。歌会に提出した作品は以下の二首。題詠は四票、自由詠は六票を得た。題詠の花野と枯野のとりあわせがわざとらしいとの意見もあったが、秋の花野のイメージが伝わった人には比較的好評だったようだ。

 昨夜しづかな花野であつたリビングがただ一言で枯野にかはる/荻原裕幸
 なにげなく零したことばの面積をはかられてゐる師走の電話

十二月の朝日カルチャーセンターの講座「はじめての短歌」は、三日と十七日に開講された。三日の出席者は11人、詠草12首。題は「吹」。地下鉄駅の吹上から一字を貰った。十七日の出席者は13人、詠草14首。題は「通」、この一字を含む地下鉄の駅名はいくつもあるが、妙音通などから一字を貰った。新年のはじめの回は、現代短歌についての話をすることになって、その次の回からは全国の都道府県名から一字を貰っての題詠をはじめる。この講座、はじめてから四年が過ぎた。二〇一一年から五年目に突入する。短歌の添削というのは、作品でラディカルな試行を楽しんでいるときにはやりにくいものだし、かと言って、何も変化を求めない添削者に魅力があるとも思えない。安定と変化を同時に求められるという、何か不思議な場がそこにあるのを感じている。講座で題詠の作例として見せたのは以下の二首。二首目の「中区錦三丁目」は必然的なものかどうかと質問が出た。他にも作品として成立する場所はあるだろうと思うが、私が地名を認識して行ったことのある名古屋の場所のなかではこれがふさわしいと感じるし、実際の錦三がモデルになっている。

 未来の冬だと知らずにここを見つめつつ写真の私が蝋燭を吹く/荻原裕幸
 わたしの影をだれかが通り過ぎてゆくこがらしの中区錦三丁目

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