« 2012年10月27日(土)/古池騒然 | Main | 2012年10月31日(水)/俄然晩秋 »

October 28, 2012

2012年10月28日(日)/梨形上上

午後、家人が義母と義姉とホームセンターに出かける。留守番。雨音を聴きながら、一人で食事をしていると、ここがどこで、いまがいつで、自分が誰なのか、という感覚がすぅっと薄らいでゆくような気がした。むろんそれらがほんとに薄らぐわけではなくて、ただの錯覚に過ぎないのだろうけど。後に電話が鳴って万象が元の感覚に戻るまで、落ち着かない時間が続いたのだった。

その人特有の、個性や考えが反映された、文章の感触や匂いのようなもの、それを私たちは文体と呼んでいる。たとえば、十月十三日に亡くなった丸谷才一さんは、何を書いているときにも、この文体によって楽しませてくれる(逆に言えば、嫌いな人には徹底して拒絶される)、稀少な作家の一人だと思う。若さや勢いとは違って、雑にならなければ劣化しない表現力である。私は、散文のみならず、韻文にもこの文体というものがあると考えているが、正体がいまひとつ掴めないままでいる。実例は出しづらいが、魅力的なスタイルは劣化がかなり早い。一方、劣化しないスタイルはいささか退屈なのである。

きょうの一首。妻にかかわる作品を誰かに見せると、概ねのろけのようなものとして読まれることになる。多少屈折してはいるものの、たぶんそれ以上のものでも以下のものでもないのだろう。この一首なども、文脈上は梨の形状がモチーフになっているわけだが、そう読む人は少ないのだろう。

 妻よりもやや硬くひろがる輪郭をなぞりつつ夜食に梨を剥く/荻原裕幸

|

« 2012年10月27日(土)/古池騒然 | Main | 2012年10月31日(水)/俄然晩秋 »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)




TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/40919/56417749

Listed below are links to weblogs that reference 2012年10月28日(日)/梨形上上:

« 2012年10月27日(土)/古池騒然 | Main | 2012年10月31日(水)/俄然晩秋 »