February 20, 2008

JUNCTION #3

 
 
  つらら   村上きわみ
 
 
 
 くるまれてやわらかくなる内臓をふゆの岸辺にひからせている
 
 あかいもの花のかたちに抜いているおんなのひとをよろこばせたい
 
 ほしいから深く通しておきました 雪をはらってお進みなさい
 
 灯台のおなかを撫でる春風によく似た声でわたくしを呼ぶ
 
 よいつらら育つ真冬をありがとう ひどいことたくさんありがとう
 
 
 
  *作者サイト(キメラ・キマイラ)
   http://www2.ocn.ne.jp/~chimera/

JUNCTIONは、不定期に開催するブログ内作品展です。今回は、村上きわみさんの短歌「つらら」五首です。寒い土地のひとだと知っているせいか、文字を読むだけで、寒さや寒さから解放されてゆくからだの感覚がめざめますが、からだ以外の箇所には、ことばが内蔵する熱や緊張感がふりそそぐようにも思われます。どうぞお楽しみ下さい。感想等、コメント欄にいただければ幸いです。

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January 08, 2008

JUNCTION #2

 
 
  200X年   ひぐらしひなつ
 
 
 
 春の日に飽かず眺めた自らの影を断ち切るような離陸を

 葉脈を陽に透かすたび唇を尖らせた はつなつのおとうと

 音信の途絶えた夏の坂道をその先にある海を思って

 秋。木炭の欠片が筆圧のかすかな窪み冷える頁に

 焦点の定まらぬまま横たわる冬のひかりの彼方もひかり
 
 
 
  *作者サイト(Very Very WILD HEART)
   http://www2.spitz.net/hinatsu/

JUNCTIONは、不定期に開催するブログ内作品展です。今回は、ひぐらしひなつさんの短歌「200X年」五首です。たとえば2008年と明示して見えて来る時間や空間があるのと同じように、200X年と書くことによってはじめて見える世界もあるのだと思います。過去のような未来のような不思議な時間ですね。どうぞお楽しみ下さい。感想等、コメント欄にいただければ幸いです。

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December 26, 2007

JUNCTION #1

 
 
  はるびん   島なおみ
 
 
 
 紫陽花のかげに殖えゆくかまきりのむかし生物兵器はみどり

 それまでは静かな午後であつたでせうみどりがゆれる銃座のほとり

 殺戮者を王座に据ゑた画のなかを夏闌けて獅子の舌濃きみどり

 枕木も芽吹いたらうか翌年の哈爾濱駅の春あめあがり

 羊膜がアジアを包むさんぐわつの空よわたしは黄いろでゐたい
 
 
 
  *作者ブログ(Where can we go in the sand-fleet?)
   http://absolutepitch.typepad.jp/blog/

JUNCTIONは、不定期に開催するブログ内作品展です。初回は、島なおみさんの短歌「はるびん」五首です。「生物兵器」に「哈爾濱」、ずどんと重くなる主題を抱えた一連のようですが、澄んだ表情のことばたちがめざすのは、その主題とはまた別の世界なのかも知れません。脚韻風な各結句のかたちもきれいですね。どうぞお楽しみ下さい。感想等、コメント欄にいただければ幸いです。

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